60年間ほどトランペットを吹いて来て、エビデンスに基づいてトランペット奏者に起こりうる疾病(身体の異変)を考えてみた。ギックリ腰、腰痛、ヘルニア、首ヘルニア、痔、肩凝り、めまい、失神、頭痛、歯が割れる、喉が腫れて食物が飲み込みにくくなる、咳などなど。
自分は“この中のいくつか”は今までに実際に経験した。思い返してみると、自分の場合、タイトで抵抗が強い楽器を吹いていた時に異変が起きることが多かった。
▼以下は内科医でMSブラスキャンプ講師でもある福田先生の緒言!
【間違った理解による練習などで無理な演奏を行うと、力任せに=口輪筋などに力を入れ唇を絞って=無理に吹くためにその圧力(抵抗圧)からValsalva試験(ヴァルサルバ法、息こらえ)のような状態になり、以下に示すような健康上の問題が出てくる。これはTpの譜面でHigh C(コンサートBb)以上を演奏する際に顕著に見られ、頭痛、めまい、または顔面紅潮・蒼白、立ちくらみなどの脳圧亢進症状を起こすことをしばしば経験し、また楽器を唇に無理に押し付けることから裂傷を負うことすらある。また過度の腹圧上昇からか痔疾を来すこともある。楽器と奏者との間の抵抗圧の上昇は過度の呼吸抵抗(気動内圧の過剰な上昇)となり、縦隔気腫の原因にもなりかねない。よってTp演奏において無理な高音演奏は奏者の健康を妨げるかもしれない。
この現象の解決に「演奏に関係する呼吸の理解」「過度の抵抗圧を起こさない楽器の選択」「舌の動きの正しい理解とその訓練」が非常に有用であり重要である。これらの理解の上で正しく練習し演奏を行うことが、奏者の健康を守り身体的発達・健康維持に寄与し、そして音楽的発達に役立つものであると考える】