My Story2 of Masashi Sugiyama

My Story

CLAUDEのレッスン

-Breathing Exercises-
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これは1979年7月8日のレッスンで 私のためにClaudeが書いてくれた処方箋。小さく気弱に書かれた左上の日付け以外はClaudeの直筆。
このようなカリキュラムがレッスンごとに渡された。後になって他のレッスン生達とカリキュラムを見比べてみたが誰1人として同じものがなく、Claude がそれぞれに合わせた練習方法を考えてくれていたのがよくわかった。この機会に17年間でレッスンの度に渡された処方箋を数えてみたら307枚あった。これには我ながらびっくりしたが、長い年月が経ったんだなぁとあらためて感じたと共にこの間にClaudeと過ごしたいろいろな思い出が甦って、ちょっとセンチになった。この307枚の中には自分のプレイにとって劇的に進歩した処方箋が何枚かあるので、それらも今後紹介して行けたらと思う。



この日は左の処方箋に書かれている5項目のレッスンが行われた。

  1. Breathing Exercises 
  2. E.D. Irons のフレキシビリティ 
  3. Clarke の Technical Studies 
  4. Claude Gordon の Systematic Approach 
  5. Claude Gordon の Daily Trumpet Routines

今回はまずレッスンに先立って行われた BREATHING EXERCISES について話をしたいと思う。 CLaude の口から最初に出た言葉が ‘CHEST UP ’と ‘BIG BREATH’ で、この言葉は処方箋にも随所に書かれているがレッスン中はもちろんの事、『Masaーshi, chest uーp!』と道で会った時も食事中でさえも、TPOをかまわず顔を合わせる度に何回も言われた。ある時とっさに私の名前が出てこなかったらしく大声で『Japaーn, chest uーp!』にはまいったが、のちにそれが大変重要だと気が付く事になる。

では、実際にレッスンの中で CLAUDE がどのようにアプローチしたかを書いてみたい。GORDON の著書、邦題「金管演奏の原理」の中に書かれている呼吸の項で友人でもある DR. Larry Miller が呼吸法について医学的立場から述べており立派な文献だと思うが、実際にClaude のレッスンの中で私は彼から呼吸する時に空気を『腹に入れろ』とか『胸に入れろ』など一度も言われた事がない。この事は彼の著書と照らし合わせてみると奇異な感がするかもしれないが、私が思うに『あまりにも間違った呼吸法の理論が世にはびこり、権威までも持ってしまっている』と彼が常々嘆いていた事と関係があるのではないかと思う。だからあそこまで具体的且つ医学的アプローチになったのだと思う。

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しかし現場では呼吸に関してただ“CHEST UP”“BIG BREATH”と言われただけである。【チェストアップをしてビッグブレスをすれば空気がきちんと肺に入る感覚が持て、管楽器プレーヤーとしてのよい筋肉が自然に付く】というのが H.L.CLARKE から引き継がれたCLAUDEの終始一貫した考えで、正しい事を正しく行えば自然によい習慣が身につき、必ず上手くいくというムードが常にレッスンの場にあった。呼吸に関する筋肉というのはよくいわれる腹筋一点主義ではなく肺を収縮できる肺の周りの筋肉を鍛えることである。当然空気は肺に入るので周りの筋肉を鍛える、というのが自然で理にかなっていると思う。(右のCLAUDEが胸をスキューズしている写真を参照) 


ゴードンキャンプに何人も生徒を連れて行った事があるが、このチェストアップに関して日本人とアメリカ人を比べてみると面白い事に気が付いた。日本人は‘CHEST U〜P!!’と言われると小学校の朝礼の時の〈気をつけ〉の姿勢を取るが、アメリカ人は映画で軍人役のトム・ハンクスやトム・クルーズetcがやるような「イエス、サー、責任は全て私にありまーす!」と上官に向かって唾を飛ばしながら叫んでいる時のような姿勢を取る。

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CLARKE とCLAUDE の写真を見るとよく分かるがCLARKE はチェストアップされている。しかし19歳の CLAUDE はレッスンを受け始めたばかりなのでまだチェストアップされていない(笑)。よほど気をつけないと日本人はCLAUDE の言う正しいチェストアップの形をとる事が難しい。だからあれだけ自分に対してしつこく言ってくれたのだと思う。


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処方箋 にある Breathing EX. 10 Breath 5 Times はCLAUDE の教則本「Physical Approach」にも書かれているが、英語なので解りやすく説明すると【チェストアップを保ちながら両手を広げ大きく息を吸って吐く】これを10回でワンセット、それを1日の中で少なくとも5回やるということ。 両手を広げチェストアップを保って息を吐く事を忘れずに。 チェストアップを保ちつつ息を吐く事は始めは非常に難しいが根気よくやれば感覚がつかめてくる。これもデモンストレーションしているCLAUDE の写真を参考にしてもらえればと思う。


breathing_ex.jpgキャンプでは朝起きてから全員集合でスタッフの「In」「Out」の号令で(まさに恐怖の体育系) このエクササイズをやってから朝食となった。このエクササイズに加えて【5 steps in、 5 steps hold 、5 steps、 5 out、5 steps hold】というのがあるが、これは5歩息を吸いながら歩き(1歩で空気を満タンにせず5歩で満タンにする)、5歩息を止めながら歩き(この時は肺に空気が満タンの状態)、5歩息を吐きながら歩く(これも5歩かけてすべての空気を吐き出す)、5歩息を止めながら歩く(この時は肺に空気がない状態)ということでこれらを連続して行う。

Claude の生徒達は毎日平均1マイルくらいは行っていたと思う。このステップスのエクササイズに限って気をつけなければいけない事は、息を吸う時には鼻で、出す時には口からというルールだ。理由はこのエクササイズは当然外で行われるので口で吸った時に外気が汚れていたり、乾燥していたり、冷たかったりする時に喉をいためる場合があるという配慮からである。(演奏している時に鼻から呼吸する事はまずない) このステップスのエクササイズは1ケ月に1歩ずつ増やしていき半年かけて10歩になる。10歩に慣れて来たら今まで「歩き」でやって来た事をジョギングに置き換えてまた5歩からスタートして10歩まで増やしていく。そしてプレーヤーであり続ける限り10Steps と10 Jogs を日課として行う。

ある時レッスン中に「肺活量の多い、少ないは演奏する時に重要な問題ですか?」と聞いたら答えは『 NO 、空気のポンピングマシーンとしての機能と性能だ』という言葉が返って来た。 …あぁなるほど。マラソン選手の歩幅みたいなもんだな…と十分納得出来た。 のちに楽器を使ってClarke の ‘Technical Studies ’と Claude の‘Systematic Approach ’での呼吸に関してのエクササイズも加わっていくがまたの機会に述べる事にする。

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〈初懺悔〉私は小さな頃から短距離走は得意でクラスの選手に選ばれるくらいだったが長距離走は大キライでマラソンの授業となるといつもどうやって学校をサボろうかと考えていた。(本当にサボってしまったこともある) したがって皆に勧めているブリージングエクササイズのジョギングだが、私はいまだかつてほとんどやったことがない(苦笑) アメリカにいた時もClaude に『ヘイ、マサーシ、 ジョグやってるかい?』と言われ『Yes, I like jog very much!!』と満面の笑みで答え、Claude の生徒達がジョギングに出かけるのを「ヘーイ、グッドラック」とか言って見送り一人ベンチでコーラを飲んでいた。 ← 越後屋、おまえも悪よのぅ、、、

Claude ごめんなさい・・・