Brass Camp Report 2010 of masashisugiyama

Masashi Sugiyama Brass Camp2010レポート

2010.7(第1日目)

今年のブラスキャンプも全国各地から、そしてなんと16歳の高校生から人生経験豊かな69歳の方までたくさんの熱血ブラスプレーヤーが参加してくれました。
今回はゾンタック別館フォーレス館を貸し切りにしてのブラスキャンプ。夜は雷雨となりましたが、館内移動のため悪天候もなんのその。昼間は天候に恵まれ最高の3日間となりました。

Flex Tongue Buildの#1〜4を使って舌の訓練

最初の講義は杉山正による「舌」の役目について。金管楽器演奏において音程を変えるものは何か、それは舌である。では、どのように舌を訓練させて行くのか、Flex Tongue Build(FTB)の#1〜#4のデモンストレーションを交えながら分かりやすく解説して行きます。
1日の練習の始まりは舌を滑らかに動かす事から。これはウォーミングアップにも最適です。FTBの他にもClaude Gordon著のTongue Level Exercises、Daily Trumpet Routinesを使ってタンギングの練習もしました。Taw - Tee のシラブル以外にも”K” タングも加わります。”K”タングポジションの舌の位置はハイノートポジションの舌の位置にも繋がる有効な練習です。この他にもここでは紹介出来ませんが、秘伝のいくつかのリズムパターンが紹介されました。目から鱗のリズムパターン練習を講義終了後早速取り入れている方多数発見。

楽器ケア

続いて深谷政巳氏の楽器のケアについての講義です。今回はリペアの話だけでなく、ハイパフォーマンスをするためにも常に楽器を良い状態に保っておくこと、またリペアに出す際には楽器の仕組みをよく理解してきちんとリペアマンに伝えることも大事だというお話がありました。講義後は楽器をもっと大切にしなくては、と思われた方が沢山いたようです。深谷氏からは昨年に引き続き、今回もブラスキャンプ中であれば希望される方はどなたでも無償でリペアを行っていただける特典を申し出ていただきました。深夜にまで及ぶ献身的なリペアの数々、ありがとうございました。

ベーシックジャズ理論

夕食後はLAを拠点に活動している新進気鋭のピアニスト&フィルムコンポーザーJordan Seigel のベーシックジャズ理論。コードシンボル、スケール、タイム感などについて分かりやすく説明してくれました。ブルーススケールの音だけを使ってのインプロヴァイズに果敢に挑戦するジャズ初心者の方々、ブラボーでした! こんなにたくさんのブラスプレーヤー達が一堂に会するのを見たのは初めてだというJordanから、来年のブラスキャンプのために、ブラスキャンプ・ファンファーレを作曲する、という嬉しい提案がありました。もちろんエンディングはダブルハイC!? 来年のブラスキャンプでは素晴らしいファンファーレが菅平高原に響き渡ることでしょう。


_1010381.jpg会場となったゾンタックの宿泊施設

ブラスアンサンブル

1日目最後のレクチャーは21時からスタートの杉山正指導によるジャズアンサンブルと松崎祐一氏によるクラシックアンサンブル。ジャズアンサンブルはGordon Goodwin Big Phat Bandの曲のブラス部分をマイナスワンならぬマイナスエイト状態で吹きまくります。杉山正がリードトランペットを務めるSerendipity18の疑似体験さながらのアンサンブルに皆さんハイテンションで取り組んでいました。
クラシックアンサンブルでは松崎氏のきめ細やかな指導であっという間にアンサンブルがまとまって行きます。部屋の外には指導を待つグループが入念に練習をしています。受講者はどちらに出てもよいことになっていたので、皆さん二つの会場を急がしそうに出たり入ったりしていました。アンサンブル指導は深夜12時近くまで行われるという初日から濃い内容となりました。

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2日目

〜トランペット演奏における横隔膜のX線透視実験についての考察〜

福田先生には「金管演奏の原理」に書かれているラリー・ミラー博士の論文を医師の立場から分かりやすく説明していただきました。「腹には空気は入らない、唯一空気が入るのは肺である。よって金管奏者は腹筋ではなく肺を取り巻く呼吸筋を鍛えなくてはならない」ことをブラスキャンプでしか見る事の出来ない貴重な身体のX線動画を見ながら皆さん大納得されたようでした。

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ジャズインプロヴィゼーション

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午後の最初のレクチャーはNeil Stalnakerによるジャズ・インプロヴィゼーション。Jordanのピアノに合わせて参加者の慶応のジャズ研、そしてライト出身の高畑君を交えたニールの演奏からスタートしました。インプロヴィゼーション(即興演奏)とは何? クリエイトすることから始めてみよう。毎週1曲ずつ新曲にトライしよう。赤ちゃんが言葉を覚えるように少しずつジャズランゲージを増やして行こう... などなど初心者でもすぐ挑戦出来そうなアドバイス満載の講座となりました。マイルス・デイヴィスの曲を数小節聴き、何回も歌ったあとに楽器で挑戦したイヤートレーニング(耳コピ)の方法も勉強になりました。


ウインドパワー

教則本 "High Air Build"を使用して実践して行く前に、100年ほど前のコルネットの名手ボーミール・クリルの「ベニスの謝肉祭」を聴きました。この録音ではクリルの素晴らしいペダルトーンのお手本を聴く事が出来ます。ペダルは顎を柔らかくして「アー」のシラブルで息(エアー)を強く吹き込みます。決してバズィングをして出してはいけません。バズィングをしてペダルを出す癖のある人は必ずハイノートを演奏する時に唇を締めて出す傾向があるのでNGです。正しいペダルを練習することはハイノートを楽に演奏することに繋がります。ペダル音域では「アー」のシラブルでエアーパワー、ハイノート音域では「イー」よりも「Hee」に近いシラブルで細く早い息。福田先生の講義で学んだ呼吸筋を意識しながら胸をスクィーズしてウインドパワーを身につけて行く練習をしていきます。どちらもウインドパワーを鍛える最強の練習です。福田先生の講義で学んだ事柄を意識しながらHigh Air Buildを使ってウインドパワーを身につけて行く練習をして行きました。
舌の訓練と同時にウインドパワーを身につけることによって耐久力が得られ、楽に演奏出来るプレーヤーになることが出来るという内容でした。


クラシックアプローチ

2日目の夜は松崎祐一氏のクラシックアプローチです。クラシックプレーヤーになるためには移調の能力が不可欠。そこで全員でKopprasch のエチュード1番を使って移調の練習をしました。Claude Gordon Brass Workshopに参加した時の話やオーケストラ舞台裏でのとっておきのトークで皆さんを楽しませつつ、クラシックの楽曲をデモンストレーションしながら講義が進んで行きます。普段はビッグバンドで活動されている愛知から参加の伊豫さんが初見で吹ききったクラシックの名曲には思わず会場からブラボーの声が上がりました。来年はオケスタマイナスワンを企画中だとか。今からとても楽しみです。
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金管アンサンブルコンサート

クラシックアプローチの講義終了後は参加者によるコンサートです。与えられた時間はたったの1日半。初日のオリエンテーションで紹介された金管アンサンブルのリーダーを中心に、皆さん食事と講義、自分のルーティーンの合間を縫って一生懸命練習をしていました。想定外の17グループがエントリーしたコンサートは、少しの時間でよくぞここまで、というハイレベルで見事なものでした。また去年参加した人達の進歩には目を見張るものがありました。
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最終日

ウインドコントロール

P1010281.JPG最終日の朝もブリージングエクササイズでスタートです。
最終講義は歴史的なコルネットの紹介とクラークのテクニカルスタディースを使って最終目標であるウインドコントロールを身につける方法。
100年ほど前のクラークの時代にはコルネットをバイオリンのように演奏する巨匠達が沢山いました。その巨匠達の演奏を聴いたあと、彼らが使用していたものと同じモデルのコルネットが年代順に紹介され、それぞれを松崎先生に演奏してもらいました。そのうちの二本はフィラデルフィアシンフォニーの元主席トランペット奏者フランク・キャデラベクが所有していたもの。他のうちの一本は全日程をお付き合いいただいたトランペット奏者吉田憲司氏が所有されているものです。

クラークはフィンガリングはもちろんのこと、ウインドパワー、ウインドコントロール、タングのチャンネルを訓練する素晴らしい教則本です。ただ、改訂が繰り返されているため、初版に書かれていたことが削除されたり、誰かのアイデアで使用されてしまったりときちんと伝わっていない部分も多い教則本です。ここではクラークからゴードンに伝わった指使いをはじめ、カットする部分、リピートの有無、回数,増やし方などが細かく紹介されました。

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記念撮影

昨年の終了時にも達成感がありましたが、今回のブラスキャンプは昨年と比べものにならないくらい、いろいろな面が進化したキャンプだったと思います。来年もさらにパワーアップさせたものになるよう講師、スタッフ一同準備して行きたいと思っています。

参加者の皆さま、本当にありがとうございました。講師、スタッフの皆さま、そしてJordanとNeilの講義を通訳してくれた娘と高木美奈さん、お疲れさまでした。ありがとうございました。
コルネットをお貸しいただき、全日程の写真撮影までしていただいた吉田憲司さん、ありがとうございました。

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