杉山 正 Brass Camp 2012レポート2

〜 すべての金管楽器奏者と金管楽器指導者のための 〜

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更新日 2017-10-12 | 作成日 2008-05-14

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Masashi Sugiyama Brass Camp 2012@ ゾンタック フォーレス館

2012.7.15 (第2日目)

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初日の夕方から臨時菅平店をオープンしていただいたジョイブラスは、朝から忙しいスケジュールの合間を縫って楽器を試奏する方、マウスピースや教則本をチェックする方々で賑わっていました。


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その中でなんと、ラリー・スーザが初夏に発売されたばかりのMSモデルマスウピース「MS3」をゲット。大変気に入った様子でした。


1限目は杉山 正による1日の練習の組み立て方

1)ブリージングエクササイズを行ってからまずやることは初日で話したpp < f > ppのロングトーン。
シャワーでも浴びているようなリラックスした中で行います。
Super Long Toneの1番を使ってサブスタッフの梅澤伸之がデモンストレーションしてくれました。重要なことは1つのエクササイズが終わったら楽器を唇から離して休み(5秒ほど)次に進みます(上限はミドルC)。これをひと月ほど行ったら2番に進みます。
エクササイズは基本的にはロングトーンですが、同じものを続けて行くだけでなく2分音符、4分音符、8分音符...とタンギングを絡めながら少しずつ変化させて行きます。この練習は、fになった時は舌が下がり、ppになった時は舌が上がることを意識しながら5分~10分ほど費やします。

2)次はタングフレキシビリティ。アイアン、コリン、スミスなどいろいろな教則本がありますが、ここではFlex Tongue Buildの1番をみんなの伊豫ちゃん(伊豫 秀さん)にデモしてもらいました。シラブルはティアエイ ティアエイ...と行いながら最高音はキックする感じでエアーを強く吹き込むことがポイントです。
教則本にも書いてあるように1つのエクササイズが終わったら必ず horn offします(楽器を唇から離して5カウントくらい休む)が、二人で行うバディシステムを取り入れて行うとちょうど良い休みが取れるとの話もありました。そこでサブスタッフの長堀史登場。2番をバディシステムでFTBを行いました。

3)次に行うのは指、タング(シラブル)、ウインドコントロールの練習です。これを一挙に出来るSmooth Tonguing(以下ST)の2番4回リピートを旭川から参加の角雅晃さんがデモンストレーションし、タング(シラブル)とフィンガリング、ウィンドコントロールを見事に披露してくれました。この練習は半音ずつ行って1週間ほど費やしたら、納得行っても行かなくても次に進みます(ここ重要)。このSTはさまざまなモデルが書かれているため、エクササイズを進めて行くことで曲を吹くための必要な要素をバランス良く発達させることが出来ます。
ここではトランペットにおけるピストンに乗せる指の使い方と押し方、フィンガリングの練習の時はフィンガーフックを使用しない、親指の位置を含めた左手の使い方などの注意もありました。

4)ここまで終えたら松崎先生も講義で話していたクロドマイヤーなどクラシックの小品の練習を必ず行います。もしこの教則本が荷が重かったらクラークのエレメンタリースタディを行います。

5)最後はレンジスタディ(音域拡大の練習)。ハイノートだけでなくペダル音域とのセットでバランスよく行うことが大事です。High Air Build またはSystematic Approach を使用します。

第2日2限目 深谷講師による楽器ケア。

今回も楽器の表面処理の説明、メッキ楽器のケア方法、そして基本的な日常の手入れ方法について学びました。トランペットについては抜き差し管の掃除は週に1回、バルブケーシングの掃除と管体内の洗浄は月に1度が望ましいとのことでした。トロンボーン編では演奏前のスライドの準備からロータリーへの注油方法、演奏後のスライドの掃除、表面の手入れ、抜き差し管の掃除とロータリーの手入れは週に1回、管体内の洗浄は月に1度ということでした。

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加えて今回は注油の画像や、なかなか見る機会のないマウスピースの旋盤作業の動画も用意していただき参加者の目は釘付け。自由時間にはいつものように参加者達の楽器をチェックする献身的な姿がそこにありました。
ラリー自身もリペア作業を行うので深谷講師が楽器をチェックする様を興味深く見ていました。

第2日3限目

ランチのあとは参加者誰よりも杉山 正が一番楽しみにしていたと言ってよいラリー・スーザによる本邦初レクチャーです。1979年にClaude Gordon Brass Campで、サンフランシスコの1stコールトランペットプレーヤでもあり、リペアマンとして楽器やマウスピースに精通しているラリーに出会って以来今日まで杉山自身も何かにつけ彼に相談して来ました。そのラリーを、杉山がこのブラスキャンプでレクチャーしてくれることになった嬉しさを体中で表現しながら紹介します。通訳は野本会長。

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ラリーは、まずどのように楽器になって行くかの過程において、Bb管と同じ長さのホースを使いながらマウスピースを付けることによる利点、ベルを付けることによる利点を実演しながら説明してくれました。この実演を通してプレーヤーは息を入れることに意識が行きがちだが、楽器,特にベルは拡声器的な役割を担っていることが分かりました。そのほか金属の含有比率についてやラージボアの細管、太管について初めて聞く、概念とは違うびっくりするような説明に参加者からも「へぇ〜」という声が聞こえて来ました。

IMG_0854.JPG次にトランペットの製造過程を例に取って楽器がどのように仕上がって行くかをスライドを交えながら丁寧に進めて行きます。普段見ることが出来ないその過程を皆さん食い入るように見ていました。
ラリーは今回たくさんの資料とともに大量のマウスピースもアメリカから持って来てくれました。寒い地域でマーチングする時に使用するマウスピースには唇がくっ付いてしまわない樹脂のリムが装着されているなど、それぞれの目的に合わせて作られたマウスピースを披露してくれました。その中には、ベルが下を向いてしまう奏者に対しては今までマウスピースを途中で曲げて調整する方法しかなかったのですが、リム自体を調整、加工することで同じ効果となるマウスピースもありました。初めて見るマウスピースを皆さん驚きながらもしっかり写真に収めていました。予定していた時間を大幅に越えて熱心に説明してくれたラリーの言葉を完璧に通訳してくれた野本会長に感謝。

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<杉山談>
今まで日本のブラス界に、パズルに例えるとワンピース欠けているものがあると感じていました。それをもしかしたらラリーが埋めてくれるのではないかと思っていましたが、今回彼のレクチャーを聞いてそれが確信に変わりました。このようなタイプの演奏面でも素晴らしく、楽器のメカニズムにも精通している人が来日したのは初めてかも知れません。彼はまだまだ今回のレクチャーは序章のような感じもしています。参加者からは来年も是非ラリーの話を聞きたいという声がありますので、この続きが実現出来ればと思っています。

第2日4限目

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4限目は堂本講師によるジャズインプロヴィゼーション講座。
前回はATNから出版されている「ジャズ・コンセプション」を教材に耳コピの方法を分かりやすく丁寧に指導していただきました。ジャズ初心者にとってこのシステマチックに学べる教材は大変分かりやすいものでした。


耳コピは

  1. 聴く
  2. 聞いたフレーズを歌う
  3. それを楽器で演奏してみる

でした。

P1020872.JPG今回は音を聞く1つの方法として、聞こえて来た音を実際に譜面にしてみることを行いました。正しく写譜することは難しいですが、ノートに残すことによって忘れない、復習出来るメリットがあります。写譜したあとはCDに合わせてアーティキュレーションはもちろん、聞こえて来る音源の音符の長さにも注意を払いながら演奏してみました。即興演奏の基本であるコピーは、英語のシャドーイングのように聞こえて来た音を即座に真似て演奏してみることはもちろん、単語帳を作成するように、気に入ったフレーズやII-V-I などをしっかりノートに書き取ってボキャブラリーを増やして行くことも大切なようです。


この日はローストビーフ、ペンネ、鶏の唐揚げスィートチリソース、サティ(シシカバブ?)、サラダ、フルーツ盛り、デザート、コーヒー。味、ボリュームともブラスプレーヤーの胃袋を完全に満たしてくれました。

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模擬オーディションとアンサンブル発表会

夕食後はブラスキャンプのメインイベント、講師も参加者も楽しみにしているアンサンブル発表会。
とその前に、松崎先生提案の模擬オーディションです。

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審査員は杉山 正、ラリー・スーザ、松崎祐一、吉田憲司、内田日富、堂本雅樹の6人です。審査員の顔ぶれを見ただけでも超緊張です。オーディションの課題曲 マーラーの5番、ストラビンスキーのペトルーシュカに伊豫 秀、梅澤伸之、福田員茂先生、角 雅晃、箕輪佳宜、小西美香子さんの6人が挑みます。
審査員が席につき、会場はシーンと静まり返りました。こんなに緊張感あふれるシチュエーションはブラスキャンプ始まって以来です(笑)。
エントリーした5人が審査員の前でこれまた数少ない時間で仕上げた課題曲を演奏して行きます。どの顔も緊張気味でしたが精一杯の演奏とナイストライに会場からは惜しみない拍手が送られました。結果はグランプリが角 雅晃さん、準グランプリが小西美香子さんでした。来年も行われるであろうこの模擬オーディションを目標に、エントリーするプレーヤーが増えて行くことを望みます。

さて、いよいよアンサンブル発表。初日に用意されたアンサンブル譜をもとに各自グループを組んで限られた時間内で仕上げるというのは至難の業ですが、皆さんの演奏はびっくりするほどレベルの高いものでラリー夫妻も感心して聞いていました。
今回もホルンで参加の大橋圭壱さんが作曲を提供してくれ、さらにトランペットプレーヤーでアレンジャーでもある吉田憲司さんがブラスキャンプ用にアレンジした曲を提供してくれたりとアンサンブル発表会も年々盛り上がりを見せています。

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皆さんの素晴らしい演奏が終了したところで、ラリー・スーザがコール・ポーターの"What is This Thing Called Love"を披露してくれました。彼のフリューゲルから次から次に溢れて来る洗練されたフレーズに会場は極上のライブハウスと化し、どの顔もうっとりと聞き入っていました。
オオトリは吉田憲司さんアレンジのブラスロック”Get It On"。吉田さんコンダクトのもと講師総出演の熱いプレイに会場はヤンヤヤンヤの大盛り上がり。旭川から参加したチューバの北村慶太さんはリハーサルから、素晴らしい現役プレーヤーと一緒に演奏出来たことに大感激していたとか。このサウンドやノリを忘れずにこれからも頑張って行って下さい!

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終了後はお待ちかねの懇親会。アンサンブル発表の緊張から解放され笑顔が戻った瞬間でした。
各地から集まった金管仲間と、また講師陣との交流を通して情報交換や楽しい時間が持てたなら大変嬉しいです。

最終日に続く... 
レポート完成まで少しお待ち下さいm(__)m